研究事業
ブレインバンク
研究組織機構図
現在の保存状況
研究室には大型と小型ディープフリーザーが設置され、温度監視システムにより1日3回フリーザーの温度がスタッフにメール送信され、緊急故障時には警報メールが送信され、アラームと液体二酸化炭素ガスボンベが自動的に作動するようになっています。半球は-80℃凍結、半球はホルマリン固定により保存しています。
剖検数
67例(患者脳57例、健常者脳10例)
実際バンク保存しているのは65例
- 統合失調症 34例
- 双極性障害 11例
- 発達障害 1例
- 認知症 3例
- ステロイド精神病 1例
- てんかん 1例
- ハンチントン舞舞病 1例
- パーキンソン病 2例
- アルコール依存 1例
- 健常脳 10例
保存65例の内、
・ 全脳固定 9例
・ 半球固定半球凍結 56例
2例は病理部保存(脳膿瘍1例、長期間人工呼吸器装着1例)
ホルマリン固定保存
一個ずつ専用のバケツで保存されている
ディープフリーザー (-80℃で保存)
ホルマリン保管庫とディープフリーザーは常時施錠され、その鍵は暗証番号付の鍵入れに保管している
死後脳試料の共同保管管理者
福島県立医科大学医学部 病理病態診断学講座 教授 橋 本 優 子
死体解剖資格 1996/09/2
日本病理学会認定 病理専門医 1997/07/28
死後脳の保管場所
福島県立医大医学部神経精神医学講座 組織研究・組織保管室
福島県立医科大学会津医療センター 実験室
死後脳試料の神経病理学的検索
東京都健康長寿医療センター神経内科・バイオリソースセンター・神経病理(高齢者ブレインバンク) 村山繁雄先生に委託している
試料提供について
当ブレインバンクでは保存試料の提供も事業として行なっています。提出いただいた研究計画を運営委員会で審議した後、提供の有無が決定されます。以下の施設に試料を提供した実績があります。
福島県立医大医学部神経精神医学講座および学内、解剖組織学講座、基礎病理学講座、生体情報伝達研究所生体物質研究部門、病理病態診断学講座、会津医療センター、東北大学 災害科学国際研究所 災害精神医学分野
学外研究場所:
浜松医科大学分子解剖研究部門、新潟大学脳研究所、徳島大学大学院医歯薬学研究部精神医学分野、国立病院機構鳥取医療センター、大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座精神医学教室、理化学研究所、東京都健康長寿医療センター、秋田大学生体情報研究センター、熊本大学大学院生命科学研究部総合医薬科学部門創薬科学講座薬学微生物学分野、東京大学医学部附属病院精神神経科、大阪大学大学院薬学研究科神経病理学分野、大阪大学大学院連合小児発達学研究科・医学系研究科、東京大学大学院医学研究科、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター、東京都医学総合研究所、熊本大学先端生命医療科学部門脳・神経科学講座、富山大学大学院 医学薬学研究部・薬物治療学研究室、名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野、慶應義塾大学医学部解剖学、理化学研究所脳神経科学研究センター、熊本大学大学院生命科学研究部分子脳科学講座、東京都医学総合研究所うつ病プロジェクト、獨協医科大学先端医科学研究センター再生医学研究部門、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、京都薬科大学
DNAバンク
DNAバンクについて
DNAバンクでは精神疾患患者さんの血液サンプルの収集、DNAの抽出、保存、解析を行っています。研究内容としては疾患関連遺伝子に関する共同研究への参加のほか、精神科薬物療法における反応性・副作用発現との関連を調べる薬理遺伝学的研究を行っています。薬理遺伝学とは、遺伝的素因による薬理作用の相違を研究対象とする学問であり、薬物療法によりもたらされる治療効果や副作用などと遺伝的要因の関連について調べています。これまでDNAバンクでは下記のような研究を行ってきました。
① 統合失調症における非定型抗精神病薬の治療反応性とドパミン、セロトニン関連遺伝子
(DRD2 Taq1A遺伝子多型、DRD2 -141C Ins/Del遺伝子多型、COMT遺伝子多型、5HT2AR T102C遺伝子多型など)
② 統合失調症の薬物療法における副作用発現に関する薬理遺伝学的研究(メタ解析)
(DRD2 Taq1A遺伝子多型、DRD2 -141C Ins/Del遺伝子多型、BDNF Val66Met遺伝子多型)
この薬理遺伝学的研究では,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いた血漿モノアミン代謝産物濃度測定も合わせて行い、ドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の動態との関連を調べる研究を行っています。
DNAバンク登録者数
534名 (令和6年8月現在)
DNAバンク 累積登録者(検体)数
東北精神疾患ブレインバンクの死後脳リソースを用いた論文成果
DNAバンクの保存状態の写真
論文・業績等
論文 : 2023.4-2024.8
(和文論文)
- 國井泰人, 日野瑞城, 富田博秋;クロザピンの作用機序臨床精神医学 52(4) 425-432 2023年4月
- 國井泰人, 日野瑞城, 富田博秋;死後脳を用いた統合失調症研究, 精神医学 65(4) 417-424 2023年4月
(英文論文)
- Miyahara K, Hino M, Shishido R, Nagaoka A, Izumi R, Hayashi H, Kakita A, Yabe H, Tomita H, Kunii Y. Identification of schizophrenia symptom-related gene modules by postmortem brain transcriptome analysis. Transl Psychiatry. 13(1):144, 2023.
- Hirai S, Sakuma A, Kunii Y, Shimbo H, Hino M, Izumi R, Nagaoka A, Yabe H,Kojima R, Seki E, Arai N, Komori T, Okado H. Disease specific brain capillaryangiopathy in schizophrenia, ipolar disorder, and Alzheimer’s disease. J Psychiatr Res. 163:74-79, 2023.
- Arihisa W, Kondo T, Yamaguchi K, Matsumoto J, Nakanishi H, Kunii Y, Akatsu H, Hino M, Hashizume Y, Sato S, Sato S, Niwa SI, Yabe H, Sasaki T, Shigenobu S, Setou M. Lipid-orrelated alterations in the transcriptome are enriched in several specific pathways in the postmortem prefrontal cortex of Japanese patients with schizophrenia. Neuropsychopharmacol Rep. (3):403-413, 2023.
- Miyahara K, Hino M, Yu Z, Ono C, Nagaoka A, Hatano M, Shishido R, Yabe H, Tomita H, Kunii Y. The influence of tissue pH and RNA integrity number on gene expression of human postmortem brain. Front Psychiatry. 14:1156524, 2023.
- Miyahara K, Hino M, Shishido R, Izumi R, Nagaoka A, Hayashi H, Kakita A, Yabe H, Tomita H, Kunii Y. Ethnicity-dependent effect of rs1799971 polymorphism on OPRM1 expression in the postmortem brain and responsiveness to antipsychotics. J Psychiatr Res. 28;166:10-16, 2023.
- Shishido R, Kunii Y, Hino M, Izumi R, Nagaoka A, Hayashi H, Kakita A, Tomita H, Yabe H. Evidence for increased DNA damage repair in the postmortem brain of the high stress-response group of schizophrenia. Front Psychiatry. 14:1183696,2023.
- Kunii Y, Hino M, Tomita H. Editorial: Molecular pathology in psychiatric diseases: frontiers of postmortem brain research. Front Psychiatry. 14:1286182, 2023.
- Hino M, Kunii Y, Shishido R, Nagaoka A, Matsumoto J, Akatsu H, Hashizume Y, Hayashi H, Kakita A, Tomita H, Yabe H. Marked alteration of phosphoinositide signaling-associated molecules in postmortem prefrontal cortex with bipolar disorder. Neuropsychopharmacol Rep. 44(1):121-128, 2024.
学会発表
(国内学会)
- 平井 志伸、國井 泰人、新保 裕子、新井 信隆、小森 隆司、岡戸 晴生;シンポジウム21脳エネルギー代謝とアストロサイトから迫る精神疾患と神経変性疾患の共通病態メカニズム;精神・神経疾患モデルマウスにおけるグルコース代謝異常、第64回日本神経学会学術大会、千葉、2023/6/1
- 國井 泰人;シンポジウム3 統合失調症の病態仮説の提案:様々な統合失調仮説の死後脳での検証、第53回日本神経精神薬理学会年会、東京、2023/9/7
- 宍戸 理紗、日野 瑞城、長岡 敦子、林 秀樹、柿田 明美、三浦 至、富田 博秋、國井 泰人;統合失調症の高ストレス応答群でのDNA二重鎖切断修復に関する分子の発現変動、第45回日本生物学的精神医学会総会、沖縄、2023/11/6-7
- 旗野 将貴、宮原 一総、日野 瑞城、長岡 敦子、兪 志前、林 秀樹、柿田 明美、富田 博秋、三浦 至、國井 泰人;ヒト死後脳組織の網羅的遺伝子発現解析に対する交絡因子の影響についての検討、第45回日本生物学的精神医学会総会、沖縄、2023/11/6-7
- 日野 瑞城、國井 泰人、宍戸 理紗、長岡 敦子、松本 純弥、赤津 裕康、橋詰 良夫、林 秀樹、柿田 明美、富田 博秋;双極性障害死後脳におけるホスホイノシチドシグナル関連タンパク質の発現変化、第45回日本生物学的精神医学会総会、沖縄、2023/11/6-7
- 細貝 優人、日野 瑞城、宍戸 理紗、長岡 敦子、林 秀樹、柿田 明美、富田 博秋、三浦 至、國井 泰人;統合失調症死後脳におけるS-パルミトイル化酵素遺伝子の発現についての検討、第45回日本生物学的精神医学会総会、沖縄、2023/11/6-7
- 長岡 敦子、旗野 将貴、細貝 優人、宍戸 理紗、日野 瑞城、三浦 至、國井 泰人、富田 博秋;精神疾患ブレインバンクにおける生前登録時の自殺予防と自殺脳研究の取り組み、第36回日本総合病院精神医学会総会、宮城、2023/11/17
- 藤井 綾香、仲地 ゆたか、日野 瑞城、宍戸 理紗、長岡 敦子、清田 恵美、今村 悠子、國井 泰人、文東 美紀、岩本 和也;日本人精神疾患患者前頭葉試料における網羅的DNAメチル化状態の予備的解析、第45回日本生物学的精神医学会、沖縄、2023/11/6-7
- 旗野 将貴、長岡 敦子、細貝 優人、宍戸 理紗、日野 瑞城、國井 泰人、富田 博秋、三浦 至;自殺者死後脳における炎症関連遺伝子の顕著な発現変動-東北精神疾患ブレインバンク集積例からの考察、第35回福島県精神医学会学術大会、福島、2024/2/4
(国際学会)
- Satoshi Yoshinaga, Julio Leon, Mizuki Hino, Yoshinari Ando, Moody Jonathan,Atsuko Nagaoka, Ayako Kitazawa, Kanehiro Hayashi, Kazunori Nakajima, Chung Chau Hon, Yasuto Kunii, Jay Shin, Ken-ichiro Kubo. Unraveling the molecular signatures of schizophrenia with spatial transcriptomics. the 66th annual meeting of the Japanese society for neurochemistry, Kobe, 2023/7/6-8.