ごあいさつ
こころの病気を克服するために「希望の贈り物 Gift of Hope」を
特定非営利活動法人 東北精神疾患死後脳・DNAバンク 運営委員会
会長 國井 泰人
こころの病気克服のために死後脳バンク、DNAバンクをスタート
私たちは平成9年から精神疾患死後脳バンク、精神疾患DNAバンクの活動をスタートいたしました。 こころの病気に悩む患者さんの数はとても多く、社会にとって克服が急がれる病気なのですが、解明が不十分な病気が多いのが実情です。 私たちはこころの病気(精神疾患)の解明と克服のために死後脳バンク(ブレイン・バンク)とDNAバンクをスタートしました。
こころの病気(精神疾患)は脳の働きの不調と社会生活の中での種々のストレスの相互作用によって起きます。 脳の働きがどのように不調なのかは病気によって異なりますが、この点が詳しくわかっていないわけです。 欧米の国々では精神疾患の脳の働きの不調を詳しく調べるために、精神疾患患者さんの死後脳を体系的に集積し研究者に提供して研究に役立てるブレイン・バンクが多数作られています。 ちょうど、がんの患者さんが検査や手術を受けられたあとに、摘出されたがん組織を研究のために提供されることがあることと同じように考えられています。 がんの研究はこうしてがん組織を直接に研究できる機会が多いので飛躍的に進展し、その結果画期的な治療薬がいくつも開発されています。 精神疾患についてもがん研究と同じようになることが望まれます。
当事者積極的参加型ブレイン・バンクがモットー
実際、精神疾患における脳の不調についての研究は主に欧米諸国でなされており、新しい有用な薬物の多くも欧米諸国で開発されてきています。 ブレイン・バンクのような研究体制の確立が病気の治療に大いに役立っているのです。 しかし、欧米の国々と比較して日本を含むアジアの国々では精神疾患研究のためのブレイン・バンクの構築が著しく遅れています。 それにはいろいろな理由があると思われますが、何よりもその必要性が強くアピールされてこなかったという問題点があります。 また、精神疾患について脳の研究をするということが気味の悪いことのように受け取られた時期もありました。 精神疾患が脳の働きの不調と社会生活のストレスが相互作用して起きることが分かって来た現在では、治療者、当事者と研究者とが協力しながらブレイン・バンクの構築および運営を進めたいものです。 私たちは当事者積極的参加型ブレイン・バンクを目指しています。 そうすることで、わが国の精神疾患の病態解明と治療法の研究も大いに前進するものと期待されます。 ご提供いただいた脳組織は運営委員会の審議により、他の共同研究機関へ分譲することもあります。 こうして研究の輪が広がり、より大きな研究成果が上がることが期待できます。
DNAの研究も必要
精神疾患の発病原因の一つには先述しましたように脳の働き方の不調があります。 脳の働き方の不調が起きてくるのには種々の原因があります。 たとえば事故により脳に傷害が加わった場合、アルコールなど脳に作用する物質を長期にわたって摂取した場合などがありますが、遺伝子の型も原因の一つになることがあります。 ある特徴を持った遺伝子の型が脳組織の形成に一定の特徴を与えます。 その特徴あるパターンを持った人は脳の働き方に一定の特徴を持つようになります。 その特徴ある脳の働き方が社会生活における種々のストレスと相互作用した時に、脳に不調が生じることがあり、生じた不調が更にストレスにより増強することによって精神疾患が発病することがあるわけです。 というわけで、精神疾患の発病要因を明らかにするために、遺伝子の型を調べることも必要であると私たちは考えました。
NPO法人ではDNAバンクも一緒です
DNAバンクの方も平成18年6月からNPO法人PMB・DNAバンク運営委員会に統合され、レインボーブリッジ・クラブはNPO法人に団体会員として参加することとなりましたが、DNAバンクの事業を精神的・財政的に支援しようとお考えの方はレインボーブリッジ・クラブにご参加いただければ結構ですのでよろしくお願いいたします。
DNAバンクに登録されたDNAの研究を通じて、より良い新治療法が開発される可能性があります。 その成果は血液を提供してくださった当事者の方にも還元されます。 この点がブレイン・バンクに死後脳を提供いただく場合との相違点になりますが、これも「希望の贈り物」(Gift of Hope)であることに変わりはありません。 こういう次第ですので、レインボーブリッジ・クラブに入会いただくことをお願い申し上げると共に、当事者の方も健常者の方もPMB・DNAバンクへ血液や唾液を積極的に登録いただけますようにもお願い申し上げる次第でございます。